1990年2月25日 産経新聞    5/16          


 うす暗い店内に突然、カスタネットの音が響き渡る。スポットライトのなかに、深紅のロングドレスに身を包み、高々と片手を上げた姿が浮かび上がる。かき鳴らされるギター。それに、激しいサパテアド(足ぶみ)の音が加わった。ショータイムの始まりだ。
 「フラメンコの魅力は、全身を使った激しい動きや飛び散る汗などの”動”を準備すための”静”の部分。その間の緊迫感ではないでしょうか」

動と静の”間”に緊迫

 

「2年後にはバルセロナオリンピックも開かれるし、スペインが注目を集めています。フラメンコを通してスペインの今に触れてほしいと思います。将来は幼稚園や老人ホームなどでも公演し、子供やおじいちゃん、おばあちゃんにも見てもらいたい」

 神奈川県厚木市生まれ。4歳の時からモダンバレエを習い地元高校卒業後、神奈川大学スペイン語学科へ進学。同大2年の春休みに、スペインに語学研修に訪れた際、たまたま飛行機の中でフラメンコのギタリストに出会ったのがきっかけで、本場でフラメンコを勉強。卒業後、2年間、本場で練習を重ね、プロデビューした。
 「フラメンコの人口は、本場スペインに次いで日本が多いんです。フラメンコの静と動は、能や歌舞伎の”間”と共通するものがありますし、例えば腰の高さを一定にして上下にあまり動かない点などは日本舞踊にも似ています。もともとジプシーの踊りですから、身体の特徴でも日本人と共通する点が多いことも日本人の人気の理由でしょうね。
  現在は中央区下山手通三のタブラオ「ロス・ヒターノス」でダンサーを務める一方、フラメンコ教室も主宰。幼稚園から50代の約40人に教えている。6月16、17日には新神戸オリエンタル劇場でスペインからの招待アーティスト7人と組んでの公演を行う予定だ。